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土曜日の夕方には、私はいつもお父さんといっしょに、町はずれのお城あとへ、散歩に行きました。 花どきには、ずいぶんにぎわうところだけれど、葉ざくらの頃になると、ひっそりして、犬ころ一ついないお城跡でした。 私は、お父さんと並んで、石垣へ 「お城は小さいけれど、お お父さんが、こんな風にいわれるのをきいて、私は、お城の小さいということが、気に入りませんでした。けれど、お殿さまの偉かったということは、お城の小さい大きいよりもうれしいことでした。 「何というお殿さまなの?」 「 「サナダ――」 「ユキムラ。」 「サナダユキムラ。」 「そうだ。」 「サナダ、ユキムラ。」 私は、お殿さまの名まえを、しっかり 「お父さん、お殿さまの名まえは、何だっけな?」 「真田幸村さ。」 「うん、そうだっけ、サナダユキムラ。」 こんなことをいって、二人で笑いました。 間もなく、私は学校へあがるようになって、先生から、真田幸村のお話をきくことができました。そして、すっかり、幸村の 「おまえ、 「おまえも大きくなったが、桜も大きくなった。」 お父さんの言葉に、私も、 いつもの石垣に腰かけて、西にひらけた眺めに向かっていますと、お日さまは、今やむこうの山の ザア、ザア、ザア…… それは、遠く河原の間を落ちてゆく 幸村がこのお城にいたころもやっぱり、同じようにこんなさびしい音がしていたのだろう。そして、お日さまも、毎日々々同じように、あの山の端に落ちてゆく。そうした日がつもりつもって、遠い年月がたって行ったのだ――私はこんなことを考えるともなく考えました。それは、お父さんから教えていただいたのでもない、学校の先生から教えていただいたのでもない、ひとり、こっそり読んだ本の中からにじみついてきた考えでした。 「お父さん、真田幸村は大阪城で 私は、ふと胸にうかんだことをたずねました。 「うん、そうだよ。」 「もし、戦死しなかったら、まだ生きているだろうか?」 「三百年も、昔の人じゃないか、今ごろ生きているもんか。」 「そう――人はみんな死んでしまうの?」 「うん。」 「お父さんも?」 「うん。」 「ぼくも?」 「……」 お父さんは、返事をしませんでした。僕だって、今に死ぬんだ、だんだん年をとって――年をとらなくたって、何か重い病気になれば――私は、冷たいものにさわったような気持になりました。 「人は、おそかれ、早かれ、みんな死ぬものだ。」 低いこえで、お父さんがいわれました。 「だが死ぬということは神仏のおはからいだ。何もこわいことはない。人は生きているうち、しっかり勉強することが大事だ、とお父さんは思っている。」 もう夕日の沈んだ遠い空を眺めて、お父さんは、白 |
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