「ああああ。お日さまは、うらやましいな。大空からたかみの
大作さんはのこぎりをなげすてて、お日さまの方へ、手をさしのばして、ぼんやり考えこんでいますとそのうちに、きゅうにからだがかるくなって、スゥッと空の高くへ浮かびあがりました。太作さんの
大作さんのお日さまは大よろこび、もはやこれからは、なんの
「だれだ。だれだ。この眼ざわりものめが。わきへのいてくれ」といいますと、
「わしは雲だ。空をかけまわるのが雲の仕事だ。お日さまであろうとお月さまであろうと、えんりょなどしておられるものか。行きたいところへ行くのだよ。」
とあらっぽい声で答えました。
太作さんのお日さまは、なるほど、こやつは雲か。言いぶんをきいてみると、お日さまよりも雲の身分の方がいちだん上だ。同じこと空で
「やれやれ、雲になりたいな。雲になりたいな。」
と思いつづけていますと、いつともなく、からだがとろけたように、らくらくと動き出しました。気がついてみると、いつのまにか、太作さんは雲になっていました。
お日さまから雲に身がわりした太作さんは、これから
「おいだれだ。お日さまよりもえらいこの雲の王さまを、ないがしろにするやつは。」
と雲の太作さんは
「わしは風の
風になった太作さんは、こんどは思うぞんぶんかけまわることができました。行きたい方へ行き、もどりたい方へもどり、空の王さまになりすましていました。ところが、ふと気づいたことには、足のさきをちくちくといたくさしとおすものがあるのです。
「だれだ。だれだ。風大王のおみ足をいためるやつは。」 と風の太作さんが、どなりつけますと、
「風のおみ足もないものだ。わしは、山の木だから、こうして静かに
これを聞いて、風の太作さんは、二度びっくり。やれやれ、こやつは山の木か。せいいっぱいわしに力を出させて、やつは、よい体操だとすましかえっている。わしは、木になるのだった。風などはまっぴらごめんこうむる。木になりたい。木になりたい。と思っておりますと、きゅうにからだがひきしまって、すっきり高くそびえた
とうとう木になった太作さんはこんどは風がきてもおどろくことはない、雲がきてもこまることはない。お日さまやお月さまの美しい光をあびて、ゆうゆうくらしておりました。
ところが、ある日のこと、にわかにおなかがきりきりいたみ出してたまらなくなりました。何ごとかと見ますと、きこりがやって来て、大のこぎりでごりごり切りはじめているのです。
「待てまて。わしは山の大王だぞ。待て。」
木の太作さんは、こんかぎりの声を出したはずみに、ふいと目がさめました。太作さんは、お日さまになったのでもなく、雲や風やまたは木になったのでもなく、山の
「ああ、わしはきこりで暮らすのが一番しあわせなのだ。」
とつくづく考えました。そして、自分の仕事はせいだして働き、いらぬ
