一匹の狼がありました。インドのガンジス川という、大きな川の岸に住んでいて、
その近くにいる、弱い
ところが、ある時のこと、雨がひどく降ったあと、川の水がついてきて、そのあたりいちめん、海のようになってしまいました。
狼の家は幸いと、岸のたかいところにありましたので、
狼は考えました。
「よしよし、おれは、ひとつ断食をはじめよう。そうして、仏さまから、何か、
狼は、高い岩の上へのぼって、なるたけ、仏さまのお目にとまるようなところへ、
狼は、七日の間、断食をすることにきめました。そのうちには、水も引くだろうとおもいましたので。
だんだん日がたつうちに、頭の中で、ガンガン
「断食って、なかなか苦しいことだな。ここらでやめにしようか。」
と狼は、いくども、考えましたけれど、断食をやめたとて、水が引かないうちは、どこへ食べものを見つけに行くことも、できません。狼は、ため息をついて、また、断食をつづけていました。
やがて、ちょうど、
狼は、そのとき、考えました。
「断食は、今日が七日めのきりだ。今日一日がまんしよう。そしたら、仏さまの御褒美にありつくこともできるだろう。」
狼は、目をつぶって、こんなことを、考えていますとき、
「めーい、めーい。」
という鳴きごえがしました。狼は、立ちあがって見ると、それは、一匹の
「そなたは、そこで何をしているのか。」
と野羊は
「だ、だんじきをしているのさ。」
狼は、かすれた声で、答えました。
「それは感心なことだ。」
「オウー」
と狼は、うなるとともに、身をおどらせました。
同時に、野羊の姿は、スウッと、
「これこれ狼よ、おまえの断食は、まことの断食ではなかったな。」
と仏さまは、