あるところに、夫婦のものが、住んでいました。二人のあいだには、四つになる男の子がありました。それから、七十あまりのおじいさんが、一しょに住んでいました。
男の子は、
夫婦のものは、男の子を、それはそれは、大事にしました。けれど、おじいさんを
食事の時には、おじいさんは
「ああ、これでは、たまらないな。」
「じぶんが食べているのだか、人が食べているのだか、わからなくなってしまう。」
夫婦のものは、うんざりして、こんなことをいうようになりました。けれど、おじいさんは、ぶつぶついいながら、いつまでも、
おじいさんの手は、始終ぶるぶるしていましたので、あるときのこと、御飯のお
もうおじいさんに、すっかり
「これなら、いくら落しても割れっこない。」
「ここなら、御飯をこぼしても、拾う世話が焼けないよ。」
夫婦のものは、こういって、食べさしのチャブ台のところへ、もどりますと、男の子は、チャブ台の上へ、ちょこんとすわりこんでいました。いつのまに、どこから拾ってきたのか、
「坊は、何をしているの。木片なんぞ集めてさ。」
と夫婦のものが、たずねました。
「坊は、木のお椀をこしらえるの。」
「木のお椀なんぞこしらえて、どうするの。」
「お父ちゃんやお母ちゃんが、お年よりになったら、木のお椀で御飯を食べさせてやるの。」
夫婦のものは、男の子のことばをきくと、二人とも、顔を見あわせて、泣き出しました。
それからというもの、この夫婦は、おじいさんを大切にしてあげるようになりました。