ある山おくに、猿と狐と兎とがよそ目にも
「おまえたち、みんなここへおいで。」
と
「何か用事ですかね。おじいさん。」
「少し
「ハイハイ。どんなお頼みですかね。」
「わしは遠いところからやって来て、大そうお
「何のおじいさん、お礼なんぞいるものですか。わたしたちは、みんなこのとおり元気です。」
おじいさんは、かたわらの石へ
「ではわしがちょいと一眠りするうちに、猿や、おまえがまず一番に何かもってきておくれ。」
やがておじいさんが、一眠りして眼をさましてみますと、うつくしい木の実が、目のまえに一ぱいならべてありました。
「いや、ありがとうありがとう。」
おじいさんはうなずいて、
「さて狐や、こんどはおまえの番だ。」
またおじいさんが一眠りして、
「ありがとう。さてつぎに兎の番だ。」
おじいさんは一眠りしました。そして眼をあいて見ますと、兎のえものは草の葉が二三枚だけでした。おじいさんは、きげんをわるくしました。
「おまえはこんな草の葉なんぞ持ってきて、この老人を
兎ははずかしさに二つの眼を真赤くして云いました。
「いいえ、おじいさん。わたしは毎日草の葉を食べて生きているのです。」
「そんないいわけは今聞きとうない。さあ、もう一ぺん行って、何かさがしておいで。」
こう云って、おじいさんはまた一眠りしました。やがて眼をさましてみますと、プンプンといい
「おお、こんどは大した
おじいさんはすっかりきげんをよくしました。けれど、その御馳走を持ってきたはずの兎は、どこにも見えません。そして、猿と狐とが地べたに顔をふせて、しくしく泣いていました。
「これは一体どうしたことかな。」
おじいさんは、ふしんにおもってたずねました。すると猿と狐が答えて云いました。「兎は木のぼりすることもできませんでした。また水へ入って魚をとることもできませんでした。わたしたちに火を
その焼き肉は、兎がおじいさんへの
おじいさんは、両手をのばして兎の
「ゆるしてくれ。うっかりおまえたちの心をためそうとしたばかりに、こんなあやまちをしてしまった。」
と云って
このおじいさんは実は天の神さまでした。兎のからだをかかえて